答志島架橋に関する一般質問

鳥羽市議会

・「平成14年 6月」第2回定例会 戸上幸子議員     

「平成14年6月」第2回定例会 6月11日

(戸上幸子議員)一般質問
 次に、生活道路としての離島架橋建設促進について、お伺いいたします。
 市長は2期目就任に当たって、答志島架橋を提唱されました。離島住民に希望の火がともりました。私は5月に各離島を回り、長崎離島架橋の視察報告を行いましたが、改めて、架橋は、私のように本土に暮らす者の想像をはるかに超える島民の悲願であることを痛感いたしました。これほどの悲願が、なぜ今まで実現しなかったのでしょうか。それは、市の財政負担が余りにも大きいと心配されたからです。だから、国の伊勢湾架橋構想に乗って国のお金で橋をかけてもらうしかない、これが従来の考え方でした。
 しかし、架橋の先進地、長崎を視察して私はびっくりしました。人口1,100人の伊王島町に建設中の橋は、橋梁部分900メートル、事業費は110億円です。国の負担が3分の2、県が3分の1です。地元負担はありません。人口5,800人の大島町、大島大橋は橋梁部分が1キロメートル、事業費は290億円で平成11年度に完成しました。この事業費のうち190億円は国と県の負担です。残りの100億円は、少しでも早く建設を促進したい、こういうことで長崎県の有料道路事業としました。つまり、2つとも国と県負担だけで町負担、行政の負担はゼロだったわけです。
 島民が欲しいのは、島と本土を結ぶ生活の橋です。ところが、国・県は巨費を投じる伊勢湾架橋偏重路線でした。長崎や熊本、広島のように、生活の橋を優先した県は、着実に架橋をふやしてきたんです。なぜ、三重県でできないのか、三重県の中で6島ですけれども、その4島を抱える鳥羽市で1つもなぜ橋がかからないのか。今これが多くの島民の思いではないでしょうか。離島、また鳥羽市の将来を見据えたとき、今こそ架橋による漁業、観光など、島の活性化を真剣に議論すべきときだと思います。行政としてイニシアチブを発揮すべきときです。市長の提唱を裏づける具体的な取り組みを今後どのように進めていくのか伺います。
 まず第1点、架橋チームを立ち上げ、まず架橋先進地の市町村の運動と県の姿勢を調査する必要があります。その体制と予算措置をとるべきだと考えますが、いかがですか。
 2点目、調査と並行して運動を進めることが大切だと考えます。今後の具体的な運動方針をどう考えているのかお伺いいたします。
 以上で、1 回目の質問を終わります。

(井村均市長)答弁
 続きまして、第2問目、生活道路としての離島架橋建設促進についてであります。
 離島架橋の問題につきましては、昨年の6月議会で片山議員及び木下議員のご質問でもお答えをさせていただきましたように、医療、福祉、教育、産業、流通など離島の持つハンディをすべて解消し、本土側と同一の条件を確立しようとすれば架橋しかないと私も思っておりますし、戸上議員が答志島のみの架橋の話を私がしたというご指摘でありますが、新年号の私の市民へのメッセージの中に、2つのルートという意味でですね。片一方は桃取から小浜、もう一つは菅島、坂手、本土という形での2本のラインの架橋が鳥羽市の将来的な大きな課題であると位置づけをしていることをご理解をお願いしたいと思います。
 島の人たちの架橋建設にかける願いも、架橋の有用性も十分に理解をしているつもりでありますし、島の将来像や、鳥羽市の長期展望を見据える中で、実現に向けて積極的な取り組みを進めていく所存でおります。
 しかしながら、多額の資金と長い年月を要する架橋事業を市の単独事業として進めていくことは、財政的に不可能であろうと考えております。ナショナルミニマムという言葉がございますが、架橋建設は離島住民の救急医療や消防、生活の安定を初めとした島民のライフラインとも言うべき役割を担うものであり、国民あるいは県民として、だれもが等しい行政水準を受けるための基盤整備として取り組んでいただく必要があります。
 ただ、架橋は多くの人々が望むメリットと同時に、デメリットの部分も数多く抱えていることをお互いに理解し合っていきたいとも思っております。とりわけ離島であるがゆえに今日まで受け継がれてきた島独特の自然や風土、都市の人々を引きつける離島という魅力、島の人たちが経営している民間船舶運送事業者への影響、さらに他県の事例に見られるストロー現象と呼ばれる急激な島の人口減少など、架橋建設と同時に、その後の島の振興策をくみ上げていかなければなりません。
 これからの架橋建設運動で最も大切なことは、島民自身の声だと思っております。現行離島振興法の改正延長と並行して策定が進められる予定の三重県離島振興計画、これは平成15年度から平成24年度までの分でありますが、ここにおいて島民自身が今後どのようなライフスタイルを望むのか、架橋問題を含めた離島住民相互の意見を集約しながら進めていきたいと考えております。
 これまでに離島架橋を実現させた市町村の多くは、島そのものが1つの自治体という一島一村が大半を占め、架橋も市町村間を結ぶ道路、あるいは県庁所在地と離島自治体を結ぶ道路として位置づけた運動を進めてきております。私どものように一部離島の場合は、より厳しい要因が幾つか絡んでくると思われます。離島架橋の推進に係る特別な推進体制や予算措置につきましては、現在のところ考えておりませんが、これまでも市行政とともに離島振興にご尽力をいただいております県会議員を初めさまざまな人々が、あらゆる機会を通じて粘り強い住民運動として取り組んでいただくことが不可欠ですので、ご協力とご支援をいただきますようお願いを申し上げまして、答弁といたします。
 なお、その他の件については助役から答弁をさせますので、よろしくお願いをいたします。

(戸上幸子議員)一般質問  2回目
 それでは次に、離島架橋の問題について2回目の質問を進めていきたいと思います。
 市長は、答志島架橋だけを提唱したのではないと。坂手、菅島も提唱したんだということでおっしゃったわけですけれども、そうおっしゃられた割にはですね、答弁の方はトーンダウンといいいますか、厳しい厳しいと困難な理由ばかりを並べられたように私は受けとめました。
 これまで鳥羽市の場合は、伊勢湾架橋に頼ってきたわけです。その場合は本当に夢の大橋っていうことで、国や県に乗っかっていったらいいということで、鳥羽市として自主的な取り組みというのは余りなかったと思います。年数回の期成同盟の大会に出たりとか、そういうことだったと思うんですね。しかし、今回の離島住民の本土と離島を結ぶ橋というのは、本当にこれからの島民の暮らし向上への願いがかかった橋、現実の橋なわけです。ですから、これまでのような姿勢ではだめだと思うんですね。その点でまず意識改革というものが行政のトップにも要るのではないかなと、私はまずその点を一番強く感じました。
 いろいろ紹介したいと思うわけですけれども、市長は架橋についての有用性については、理解しているつもだと、島民の願いも理解している。しかしデメリットもあると。いろいろおっしゃられたわけです。では、日本離島センターが平成9年度の国土庁の委託で離島架橋の効果とその活用による離島振興方策に関する調査、こういう調査をしております。図書館に分厚い調査資料があるわけなんですけれども。つまり架橋は、莫大な費用がかかります。ですから実際に橋をかけた町で本当に離島活性化に役立っているのかどうか、これを国が調査した、その資料であるわけです。ですから各自治体にアンケート調査をしたもので、とても貴重な資料です。
 これによりますと平成10年1月現在、架橋により本土とつながった旧離島振興法指定離島は、33島、37市町村に上っております。当時、平成9年当時建設中が11島、8町ありました。ほぼ現在完成しているとしますと合わせて44島、45市町村が架橋によって本土と陸続きになったということです。この点を調査した資料です。この中で建設中のものを除いて33なんですけれども、実施主体は県が19と6割を占めています。次いで道路公団です。鳥羽のように海上部分が1キロもあるようなところで、その地元の自治体が建設したような例は、私が見る限りありませんでした。先ほど市長は、もう口癖になっておられるのか、お金がかかると、市単独で進めるのは非常に難しいということをおっしゃったわけなんですけども、私1問目から言ってますように国・県の財政負担で建てるということです。
 さて、肝心の架橋効果なんですけれども、これもいろいろアンケートがされておりますが、重立ったところを紹介したいと思います。通勤通学に関して1万人未満の島ですと、93%の市町村が効果があったと回答しております。島外への通勤通学圏の広がり、時間短縮を挙げております。鳥羽にとって関心の高い観光への効果なんですけれども、1万人未満の町では71%が大幅にふえたと回答しております。そして、漁業への効果も関心の高いところです。漁業は8割が効果があったと回答しております。その内容として、出荷時間の短縮、出荷時間の制約の解消、出荷の安定性、輸送コストの削減、新たな市場開拓、こういう順になっております。このほか、鹿児島の長島というところなどでは、従来フェリーで運んでいたときよりも高い価格で販売できるようになったとか、えさも安価で大量に購入できるようになったと回答しております。
 市長先ほど言われた人口のストロー現象なんですけれども、これもずっと離島性を維持していた離島と、この本土への架橋によってつながった町を比較した資料もありまして、定着率は明らかに橋でつながった町のほうが高いと、こういう結果が出ております。ストロー現象はブレーキがかかっております。
 ちなみに長崎県でも私は聞き取りをしました、架橋担当者に。長崎県では79市町村ありますけれど、その3分の1が離島です。うち5町が既に本土と陸続きになっております。現在2つの架橋を建設中です。担当者によれば、本土から1キロ程度の離島で要望があるところはほとんどかかったと、そのように認識しているという答えでした。あと架橋希望があり、残されたのが今1つある、こういう答弁でした。
 広島県の県の担当者にも聞き取りをしました。現在、有人離島は14あるそうです。1万8,000人が住んでいます。広島県では、昭和36年から平成12年までに9本橋をかけたそうです。そして本土と陸続きになりました。40年の間に9本ですから単純に考えますと4年半に1本橋が架かったということになります。これを鳥羽市に当てはめますと、神島はさておきましても坂手、答志、菅島、3本で13年半でかかると、実現すると、こういうことになるわけです。広島県現在、平成20年目標の建設計画がさらに1本あるということでした。
 こうして先進地の事情や、また日本離島センターの調査などを見ますと、三重県が架橋は難しいんだと、そういうことを言っているのが、時代おくれのような感がしてくるわけです。先ほどの市長の答弁は、本当になかなか難しい難しいっていうことだったわけですけれども、この架橋はお金がかかるということではないわけですね。国・県への運動、熱意とエネルギーが要ります。しかし基本的にはお金はかからないわけです。もちろん、橋がかかったらその近くの公園を整備するとか、ちょっとした工事はありますけれど、基本的にはかからないというのは、他県の例が示しているわけです。ですからお金は要らないとまず思っていただいて、熱意とエネルギーが要るわけです。その点で市長の答弁を求めたいと思います。先ほど同僚議員からも5月に北川知事が鳥羽に見えたときに、答志島の中学生が知事に橋をかけてほしいと直訴をしたと、こういう例も紹介してくれっていうことですので紹介したいと思います。
 離島住民は、署名をもう始めたい。知事にも手紙が書きたい。そんな声がいっぱいあります。この声に一体どこの課が窓口になって担当するのか。全く行政のほうが後手に回っているわけです。計画を持っただけではだめで、市長の熱意を形にする必要があると思います。踏み込んだご答弁をいただきたいと思います。
 以上で2回目の質問を終わります。

(井村均市長)答弁 2回目
戸上議員の離島架橋についての問題で、どのように取り組んでいくのかとのご質問にお答えをいたします。
 離島架橋につきましては、島民の声はもちろんですが、市としても何としても実現をさせたいものでありますので、今後も引き続き努力をしていきたい。県の離島でもあるという部分での県への働きかけが、やはり一番これまで鳥羽市側に欠けていた部分であるという認識で、今後とも県へ強く働きかけていくとともに、新しい離島振興法の中に具体的に市としての要望として県へ上げ、県から国に建設についての努力を求めていくという部分、そこに力を入れて頑張っていきたいということで答えとさせていただきます。
 

【閉じる】

 
 
答志島架橋建設促進協議会