答志島架橋に関する一般質問

鳥羽市議会

・「平成13年 6月」第2回定例会     片山幹夫議員         

「平成13年6月」第2回定例会 6月11日

(片山幹夫議員)一般質問
 質問の第1は、離島架橋構想の具体化推進についてであります。
 市長は、第二期目の就任に当たり、重点項目の抱負を述べられ、本市の活性化に向かって意欲的な方針を示されましたので、厳しい情勢下ではありますが、一つ一つの課題実現のために、そのリーダーシップの発揮を期待するところであります。幾つか示されました抱負の中で、離島振興対策の大きな目玉として、離島架橋構想が打ち出され、その中でこれまで積極的に市が動いてこなかったが、生活道路として架け橋の必要性を県に訴えて、離島住民の希望にかなえられるよう、本腰を入れて努力するという前向きな姿勢を新聞紙上で明らかにされました。離島に住む人たちにとって、架け橋は生活環境格差の改善や、産業振興、あるいは就業対策や、後継者対策、または救急医療対策や福祉、教育の拡充など多くの課題解消のために、長年の大きな願いであり、夢であります。
 過去、昭和62年に答志島では、当時人口3,540人のころでございましたが、本市が三重短大の綿密な調査によりまして、島の開発構想調査報告がまとめられ、21世紀に向かって総合的な構想が示されました。その中で特に当時の浜口市長が開発構想の柱として、答志島架橋構想を打ち出された経緯があります。当時として、小浜半島から桃取間、二車線で橋の長さ1,500メートル、総事業費209億9,800万円という概要も発表されましたことは、ご案内かと思います。この架橋構想に対しましては、島の素朴さが失われる懸念、あるいは、自然環境の問題等、幾つかデメリットの議論もありましたが、多くのメリットが明らかでありましたので、島民のアンケート調査等も行い、島挙げてこの構想の実現に期待したものでございました。以来、14年の間、当時の関係課長さんも在職でございますけれども、市当局において、どう具体的な推進検討や、運動展開がなされてきたかは定かではありませんが、時代の変化や財政事情等があったろうと思いますが、この構想は具体化に至らず、残念ながら立ち消えになってしまったと、このように記憶しております。
 そして今、関連して太平洋新国土軸構想による伊勢湾口道路構想が本格化して、いろいろ調査が行われ、ほぼ基礎調査は終了したと聞き及んでおりますが、諸般の情勢によりいまだ実現性が不透明な中で、本年3月には県議会で木田県議が答志島架橋を早急に取り組んでほしい旨の一般質問をされましたが、県当局は海上部の県道への認定要件や事業費概算数百億円に対する財政事情や投資効果から見て、現時点では困難という答弁がなされたと伺っております。このような経過や情勢の中で、このたびの市長の架橋構想については、離島住民は目が覚める思いでありまして、新たな希望がわいてくる気分であります。
 そこで、1点目は今の厳しい時代背景の中で、定期船の最終便の延長すら難しい中で、架橋構想の実現に向かって市長の基本姿勢について示していただきたい。
 二つ目は、新道路整備五箇年計画国家プロジェクトの伊勢湾口道路構想と離島架橋の構想がリンクした考えなのか、あるいは、別メニューの構想なのか、また、湾口道路の実現見通しはどうなのかお伺いします。
 3点目は、離島架橋を生活道路として実現を期するために、地域の熱意と強力な推進運動体制の立ち上げが第一歩と考えますが、市長の構想のもと本市の推進体制づくりについてどう考えておられるのかを求めます。


(井村均市長)答弁
 まず、1点目の架橋構想における基本姿勢についてですが、離島住民にとって架橋建設が長年の悲願であることは、島での生活経験を持つ私も十分理解をいたしております。それだけに、新しい時代を展望する活力ある島の未来像として、離島架橋の実現を位置づけたいと考えてまいったところでございます。架橋建設は一般論では道路形態の一つにすぎないわけですが、離島架橋の場合は海上交通という極めて不安定な交通手段を24時間利用可能な陸上交通体系へと変化させ、救急医療や消防、産業振興などを初めとする島民のライフラインともいうべき役割を担うものであります。離島架橋が海による本土との隔絶性を根本的に解消する手段になるという点で、本土における一般的な道路整備とは基本的な違いがあると考えております。
 平成4年の離島振興法改正では、離島を取り巻く環境の変化を踏まえ、総合的な交通体系の整備が必要であるとして、同法第14条で交通の確保に関する特別の配慮規定が設けられました。しかしながら、議員立法で制定されましたこの離島振興法は10年間の時限立法であり、平成14年度末にはその期限が切れ、法律としての効力を失います。
 現在、離島及び一部離島を抱える228市町村で構成する全国離島振興協議会でも同法の改正継続に向けた運動を進めておりますが、鳥羽、磯部、志摩の1市2町で構成する三重県支部としましても、先月開かれましたこの全離島の通常総会に離島振興法の継続と国民だれもが安心して暮らせる生活の基盤整備として、離島架橋を位置づけ、架橋建設に当たってはこれまで以上の特別措置をとるよう、強く働きかけるべきであるとの提出議案を出したところであります。議員各位におかれましても、離島振興法の継続に向けた取り組みについて、ぜひともご理解とご協力を賜りますようお願いを申し上げる次第です。
 次に、2点目の伊勢湾口道路計画とのリンクについてですが、議員もご承知のとおり、伊勢湾口道路構想は、昭和40年の国連のワイズマン報告に端を発した国家的プロジェクトであります。以来35年が経過し、太平洋新国土軸構想は今交通軸としてだけでなく、地域の人々の営みの軸として、そして、太平洋新国土軸の東の入り口として位置づけられ、紀淡海峡、豊予海峡とともに改めて日本の21世紀のグランドデザインを問う大きな課題を背負っているものと認識をしております。
 また、私はこの構想は21世紀の日本の国土づくりの先導的役割を担うものと確信をしており、国家的プロジェクトとして新しい国土計画に明確に位置づけられるとともに、三つの海峡横断プロジェクトを初めとする交通基盤整備が着実に進展するよう、伊勢湾口道路建設促進期成同盟会の活動の場や伊勢志摩地区広域市町村圏協議会の中でも積極的に要望活動を取り組んできたところであります。
 また、伊勢湾口道路は第二東名名神高速道路、東海環状自動車道等とともに、環伊勢湾八の字型環状道路を形成し、地域整備の重要な骨格をなすものであり、同時に三河湾口道路と一体となって、中部国際空港の広域アクセス道路としても大きな期待が持たれています。この道路の実現見通しについてですが、当面の最重要課題は道路特定財源制度を堅持することと合わせ、次期道路整備5カ年計画において、ただいま候補路線でありますが、事業化に向けた計画路線に格上げをしていただくことであります。これまでも国や県において、いろいろな調査が行われてきましたが、候補路線の域を出ておりませんので、この計画とは別の視点で離島架橋を検討したいと考えておりますので、ご理解を賜りたいと思います。
 次に、3点目の架橋実現に向かっての本市の推進体制づくりについてですが、交通の利便性という視点からとらえれば、離島であるがゆえのハンディは大きなものがあると認識をしております。それを解決する方法は架橋しかないと考えております。しかしながら、これだけのプロジェクトを市が建設することは財政的に不可能でありますので、国・県の事業として取り上げていただけるよう、積極的に市民の皆さんとともに運動をしていきたいと考えておりますが、市の内部に専任する部署を置くことまでは考えておりませんので、ご理解を賜りますようお願いを申し上げます。

(片山幹夫議員)2回目
 離島の架橋構想でございますが、島の暮らしのハンディや後進性について痛切に体験をされております市長さんが離島架橋の実現を位置づけられましたことは、この決意に対して大きな意義があります。まさに夢の架け橋ともいうべきこのプロジェクトはもちろん市の事業として、計画化できるものではないのであって、いかにして国や県の事業に取り上げてもらえるかが課題でありますが、太平洋新国土軸構想への伊勢湾口道路とはリンクせず、新規に別の視点での架橋構想という答弁について、今、道路特定財源の見直し等が叫ばれる中で、国や県の施策の中に、どう位置づけをして、事業採択をしていただけるかということが問題だと思います。
 現在全国で本四公団架橋等13の架橋が実現していることは広く知られておりますが、ちなみにこのほかに離島振興事業で実施された架橋が長崎県の23、熊本県の18、鹿児島県五つ、山口県五つ、広島県14を初め11県で71の架橋が離島振興法の適用で行っております。そのうち現在着工中のものが、長崎県で平成9年より二つ、平成11年から広島で1、岡山県で1、平成12年からは熊本県で1カ所が事業中であるというふうに聞いております。この離島振興法71の架橋を事業手法で分類すると、一般生活道路で47、農道で18、漁港関連で五つ、港湾で一つというような実態になっております。全国でこのような先進事例があることは、まことにうらやましい限りであり、本市ももっと早い機会にどうにかならなかったのかなという思いがしますが、年々財政事情が厳しくなり、採択要件の中にはクリアすべき幾つかの難題があろうし、容易なものではないと思われますが、特に素人なりに興味を引くところは、漁港関連の手法では漁港の外郭事業の延長の考えとか、漁港の維持管理や水産物の集出荷の改善等の根拠が基本であること聞いており、本市においても漁港関連等でこれから実現のための道筋がつけられないものか、強力な運動展開を望むところでございます。
 平成14年度末で時限立法が切れる離島振興法の延長運動とともに、この際、離島振興事業の中で架橋建設の拡大と特別措置の実現について率先して運動を展開することを約束いただきたいと思います。架橋実現のため推進体制づくりについては、構想中としての段階では当然考えられないと思いますが、準備期間として最短10年から30年は要すると言われる中で、大切なことは地域の意思統一の中で、地域を挙げて熱意を示し、強力な住民運動を展開することが大切だと思いますし、方針が固まれば促進期成同盟会の発足等推進母体の結成の考えについてお聞かせをいただきたいと思います。

(井村均市長)2回目答弁
 まず、1点目の離島架橋構想についてですが、先ほど述べさせていただきました太平洋新国土軸構想の伊勢湾口道路につきましては、現時点ではルート決定がまだされておりません。渥美半島から鳥羽市に至る距離的な面を考えますと、少なくとも二つの島を通る必要があるのではないかと、推しはかっておるわけでありますが、残念ながらこの湾口道路の実現で、本市が抱える四つの離島すべての離島性を解消することはできないだろうと考えております。離島架橋につきましては、片山議員の言われるように一般生活道路など先進地の事業手法を探りながら、今後進めていく必要があります。そのためには、先ほど申し上げましたように、平成14年度末で期限が切れます離島振興法の延長運動に向けた取り組みが最も重要であります。離島架橋の促進につきましては、離島振興法改正検討会議の中でも離島対本土間、離島相互間の架橋を積極的に進めるとの報告が出されておりますので、今後、離島振興法改正延長実現総決起大会や国会等への要望運動の中でも、これらの組織とともに、率先して運動を展開いたしてまいる所存であります。
 いずれにいたしましても、架橋実現のためには、そこに住む人々の熱意はもちろん、片山議員の言われたとおり地域が一丸となった住民運動が不可欠ですし、体制づくりにつきましては、構想が明確にならないうちは具体的な推進組織を立ち上げるのは難しいと考えております。今後、離島住民相互の意見調整、鳥羽市民全体としての離島架橋に関する合意形成などに向けた取り組みを進める中で、組織づくりも検討してまいりたいと考えておりますので、ご理解を賜りますようお願いを申し上げます。

(片山幹夫議員)3回目
3回目の質問をいたしますが、架橋問題は単に島の生活の不便さの解消だけでは実現は非常に厳しいと思いますので、島のメリットのみならず、地域振興や鳥羽市、あるいは県全体としてのプラス面、投資効果等について全体的な位置づけをこれから明確にして国の施策に乗れるかの戦略を専門的に検討し、推進をしていただきたいと思います。また、仮に実現した場合には、完成後1年で離島振興法の指定解除となりますので、島のその他の振興策や保全策等へのマイナス影響等十分な住民との意識の統一等も必要かと思います。今、答志島3町で組織している活性化21委員会でも、水産部門、生活交通アクセス部門、教育部門の協議においては、先ほどの最終便の延長問題とともに、究極は架橋実現が大きな願いでありますので、さらには、島には県道もありますので、県道との連結もあわせこれから先、市当局の本腰を入れられた積極的な運動を展開していただきまして、構想だけで終わらないようにひとつご尽力をお願いしたいと思います。
 統合市場につきましては、この基地確定の姿勢が主体性、積極性が非常に乏しいような実感がいたします。漁協合併も国・県の施策の一環でありまして、統合市場計画も今の国会で上程されている国の水産基本政策大綱に基づく産地市場統合再編整備計画に示された国庫補助事業としての施策がありますので、検討するとか、望ましいとかいう考えの域を超えて、担当課においてめり張りをつけて上部への折衝を重ねていただいて、国の施策に乗りおくれないような強力な指導性を発揮していただきたいと思います。 以上、私の質問を終わります。
 

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